2011年04月19日

●『線ほと』ご来場ありがとうございました。

『線のほとりに舞う花を』
無事11ステージを終え、終演いたしました。

ご来場を心より感謝申し上げます。

このような折に、たくさんの方々が王子まで足を運んでくださいました。
途中、大きな地震に見舞われる事もなく
無事千秋楽までたどり着くことができました。

現在、てがみ座では2011年9月と2012年1月に
公演を予定しております。

次回以降もこの経験を糧にして、精進して参ります。

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撮影/伊藤雅章


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地震の影響は大きく、ご予定がなかなか合わないお客様もいらっしゃいました。
そこで、当日パンフレットに掲載した、主宰・長田と、演出・前嶋のことばを
こちらのブログで紹介させていただきます。


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3 月11 日を越えて―― 「線のほとりに舞う花を」によせて


あの日から一ヶ月が経ちました。
私たちは、3 月11 日以降の世界に生きていて、もうそれ以前に戻ることはできません。

被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げますとともに、
これから先、私たち表現に携わる者たちが何を考え、どう生きていくのか、
大きな問いが投げかけられているのを深く実感しています。
この物語を構想した時には、ネット上ではエジプトのデモのツイートが流れていて、
私は、今この世界で起こっているリアルタイムの革命、その気配に耳をそばだてていました。
遠く離れたこの日本でどうしたらより実感が掴めるか歯がゆく思いながら。
あの日が来るなんて、まるで思わずに。

3 月11 日以降、公演中止を選択した劇団もたくさんありました。
けれど私たちは、稽古場に集い続けました。終日運休の地域に住むメンバーは、
苦心してどうにか稽古場に辿り着く。
舞台打ち合わせの夜には突如大規模停電の予告がなされ、
それでもスタッフ陣は真っ暗な新宿に自転車で集う。
上演できるかどうかわからなくても、上演のための稽古をすること、
それ自体が、私たちにとって大切なことを考え抜く時間となっていたからです。
生きていくこと、人の営み、そして――人と土地の絆のことを。

今回の舞台は、てがみ座では初めての音楽を取り入れた舞台です。
物語の背景には東欧の歴史的事実があります。
史実や記憶を忠実に描き出すことが今回の舞台の本意ではありませんので
劇中では具体的な名称は一切出てきませんが、
縦糸となる登場人物のモデルはロマという民族の人々です。
ロマは、日本ではジプシーという呼称で知られる少数民族。
あまり知られてはいませんが、ロマもナチスによる迫害を被った「排斥された民族」です。横糸
にはこれまで触れてきた多くの国境線の光景があります。
特に影響を受けているのはアゴタ・クリストフ、アラバールなど。
こうした物語の世界に立ち現われてくる様々な線を越えてゆくために、音楽の力を引き寄せました。

演出の前嶋ののさん、イマジネーション溢れる個性豊かな役者陣、
ジャンベプレイヤーのナリテツさんとともに、より遠くへ、より深く、
鮮やかなイメージの中へ飛び込んでゆこうと思います。

3 月11 日を越えて上演する舞台。
私たちは、おそれながらも確かに一歩踏み出してみようと思います。
その日以前には戻れない心と身体で。
踏み出した先にしか見えない光景があると信じて。

本日は劇場にお越しくださいまして、本当にありがとうございます。
お会いできて嬉しいです。どうかごゆっくりご覧ください。

演劇ユニットてがみ座 主宰
長田 育恵



「境界線」は人間にとってどういうものなのかを考える作品にしたい。
長田さんからそうお誘いを頂いたのは去年の冬、
延坪島砲撃事件が起きた後だった。
新宿の珈琲屋で話に聞き入り、
その長田さんの熱に吸い付くように演出をさせて頂く事になった。

平和な時代を生きてきた私たち世代の演劇人は、
経験したことのない戦争や迫害の痛みを描くことに大きなためらいがある。
その慎重さはもちろん必要だが、そこに触れることに恐がりすぎてはいないだろうか。

長田さんは肩肘を張らず、まっすぐに世界を見ようとしていた。
そして自分の言葉で「現代」を描こうとしていた。勇気のある作家だと思った。

やがて書き上がってきた作品には、
巨きな力に翻弄されながらも与えられた場所で必死に生きる、
普通の人々の姿が描かれていた。
結局、どんな物語でも俳優が人間を演じる事に変わりはないのだと思った。
ひとつひとつの人生を考え、立ちあげていくしかないと。
そんなことを考えながら稽古をしていたら、突然地震が起こった。
被災地の映像を見て呆然とした。
こんな風に何もかもが奪われることが現実にあるんだと思った。
一瞬、国とか世界とか地球とか、何もかもが不確かなような感覚に陥ったが、
東京で暮らす私は簡単に日常を取り戻した。

被災地では信じられない状況に陥りながらもそこで暮らしている方々がいる。
現実を知りたいという気持ちと、自分との距離を感じ、
ニュースでその様子を見る事さえ申し訳ないような気持ちと、
矛盾した思いがぐるぐるとめぐる。

しかしやはり自分の目で、今起きていることを見つめるしかないのだと思う。
本日はご来場ありがとうございます。
俳優達、スタッフ陣と紡いできたこの物語を、観客の皆さんに受け取って頂けると幸いです。
どこの国でもない話。すべての国の話。どうぞごゆっくりご覧下さい。

演出・前嶋のの(思考動物)

posted by てがみ座 at 15:10| Comment(0) | TrackBack(0) | てがみ座 公演情報
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